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鼠径ヘルニア手術で使用するメッシュの必要性

そけいヘルニアで使用するメッシュとは

鼠径ヘルニアは、鼠径部の筋膜が弱って穴があき、その穴から腹圧に押された腸がでっぱる病気です。

鼠径ヘルニアの手術の目的はその穴を塞ぐこと。

やり方として、穴を縫い閉じる従来法とメッシュで穴を塞ぐメッシュ修復術があります。

メッシュ修復術ではメッシュと呼ばれる網状の医療用合成繊維を用います。

入れたメッシュは一生そのままで、取り出すことはありません。

現在、大人の鼠径ヘルニア手術ではこのメッシュ修復術が第一選択となりますが、

人工物を身体にいれるのは不安… メッシュって安全なの?

と心配される方もいるでしょう。

このページでは、『鼠径ヘルニア手術でなぜメッシュが必要なのか』についてお話します。

メッシュの必要性

メッシュはポリプロピレンなどの合成繊維でできた人工物です。

ポリプロピレンを人間の身体に入れるようになって約60年ほど。これまで合併症もほとんどなく、素材としては比較的安全なものであるといえます。

しかしながら、体に異物を入れるのは抵抗があるという人もいるでしょう。

当院を受診される方の中でも、「メッシュを入れずに手術できませんか?」とおっしゃる方も時々おられます。

メッシュを使わない従来法で手術をすることは可能です。ただし、おすすめはできません。その理由としては以下があげられます。

再発する可能性が高くなる

従来法は穴の周囲の筋膜や組織を引き寄せて縫い閉じます。寄せ縫いした筋膜には緊張がかかって強度が落ちますので、また穴が開いてしまう可能性が高まります。(再発ということです)

手術後の痛みが強くなる

従来法は引っ張られてつっぱった状態で縫い閉じられます。そのため手術後は少し動いただけでも引きつれ、痛みがかなり強くなります。

(メッシュ修復術の場合もつっぱるような痛みは出ますが、従来法に比べ格段に少なくなりました。日帰り手術でも可能なくらいに痛みを抑えられるようになったのは、メッシュのおかげとも言えます。)

長い歴史のある従来法ですが、上記のように問題点が見えてくるようになりました。そこで登場したのがメッシュ修復術なのです。

メッシュ使用のメリット

大人の鼠径ヘルニアでは、加齢などの理由で穴の周囲が脆弱になっている場合も多いため広く補強することが必要になりますが、メッシュは穴よりもサイズが大きくできているので広い範囲をカバーすることができます

また、従来法のように組織を引っ張ることはないので、メッシュ修復術が主流となってからは術後疼痛の訴えが格段に減りました(2013鼠径ヘルニアガイドラインより)

鼠径ヘルニアを穴の開いた靴下に例えると・・・

このまま縫うと引っ張られてシワシワに!

例えば、穴の開いた靴下を直すとき、穴を縫い閉じますか?それともつぎはぎをしますか?

穴が小さければ縫い閉じるだけで済みますが、穴が大きかったら縫い閉じるとつっぱってシワになってしまって履き心地が悪くなります。その場合はちょうどいい大きさの布をつぎはぎして塞ぎますよね。

鼠径ヘルニアも同じイメージです。穴が小さければ縫い閉じるだけでも問題ないことが多いのですが、大人の鼠径ヘルニアはだいたいの方が大きめの穴があいていますので、縫い閉じるにはかなり寄せ縫いが必要になるのです。なので、メッシュでつぎはぎをするわけです。

メッシュは様々な形状のものを用意していますので、術中判断で適した形のものを使っています。

メッシュ使用によるリスク

リスクのひとつとして、メッシュ感染があげられます。

メッシュは人工物なので、菌がついて感染するとやっかいです。人間の身体であれば薬が効きますが、人工物には薬が効きません。メッシュの網目に菌が入り込んでしまうと抗生物質などを使用してもメッシュ感染は抑えられません。

メッシュ感染は全国的にも稀な合併症ですので、起きうる可能性としては少ないです。しかし手術を受ける方にはリスクとして手術前に必ずお話しなければなりません。

もしメッシュ感染を起こすと、最悪の場合メッシュごと取り除かなくてはなりません。

ごくまれに、戻らなくなった嵌頓状態の鼠径ヘルニアで血流障害が起きて腸がやぶれてしまうことがあります。この場合腸液が漏れお腹の中は汚染された状態ですので、メッシュを使うとメッシュ感染の可能性が高くなります。そういった場合はメッシュを使用せず、従来法で縫い閉じて修復します。(もちろん従来法なので再発リスクはありますが、メッシュ感染リスクの方が重大。より患者さんにとって安全な方法が選択されるわけです)

また、リスクというほどではありませんが術後に異物感を訴える方がいらっしゃいます。比較的少数ですが、「触ったときに何か触れる感じがある」「なんかいつも気になってしまう」などといった訴えです。

メッシュは薄く、網目に組織が入り込んで身体と一体化していきますので、ほとんどの方は違和感なく過ごすことができますが、一部の方は異物感を感じることがあるようです。

異物感は時間経過で慣れてもらうほかありません。痛みが治まったらよく身体を動かし、なじませていただくことをおすすめしています。

術後数か月~1年以上経過するといつの間にか忘れてしまう方がほとんどですが、ごくわずかに術後1年以上経過しても「気になる」とおっしゃる方もいます。

メッシュ修復術ではなく従来法が適している場合

これまでメッシュ修復術のメリットについてお話してきましたが、従来法をまったく行わなくなったわけではありません。

従来法での手術をおすすめする場合もあるのです。

例えば小児の鼠径ヘルニア手術であればメッシュは使わずに従来法で手術をします。小児の鼠径ヘルニアの場合は穴自体が小さく、成長で周囲の組織が強くなっていくからです。

※当院では小児の鼠径ヘルニア手術は行っておりません。小児の手術には成人手術とは異なる器械や麻酔が必要になるからです。(高校生以上であれば比較的身体ができあがってきているので問題ありません。従来法で手術を行っています)

つまり、ヘルニアの穴が小さく周囲の組織がしっかりしていれば、上記の従来法の問題点による影響もさほど大きくないため、従来法で事足りるということです。

若年男性・若年女性の場合もこの条件が当てはまることがありますので、その場合は従来法で手術を行っています。


鼠径ヘルニア手術のメッシュについて、なんとなくイメージが湧きましたでしょうか?

わからなかった点、新たな疑問などありましたでしょうか?

当院ではいつでもご質問をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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大宮セントラルクリニックは、下肢静脈瘤・鼠径ヘルニアの日帰り手術を行っている外科クリニックです。

2007年に埼玉県さいたま市大宮区で開院して17年。診療日は毎日診察・手術を行っています。

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この記事の監修者

理事長 高島 格:近影

医療法人社団オリビエ会  
大宮セントラルクリニック
理事長 高島 格

紹介をもっとみる

1960年東京都生まれ。
東京医科歯科大学医学部卒業後、病院の外科で20年勤務し様々な手術を経験。
中でも得意としていた日帰り手術をより多くの人に受けてもらいたいと、2007年東京都新宿区に日帰り手術専門の新宿外科クリニックを開業する。
現在は、新宿外科クリニックと埼玉県さいたま市の大宮セントラルクリニックの2院を運営し、累計手術実績は下肢静脈瘤手術で約11000件以上、鼠径ヘルニアは8600件以上に及ぶ。

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