鼠径ヘルニア
手術前後の生活と注意点
食事
手術前日までは食事の制限はありません。
手術の当日は手術時間より6時間前からは禁食となります。持病で服用しているお薬については、初診時に医師・看護師から指示があります。
脱水を防ぐため、水分は手術直前まで積極的に摂取してください。ただし、ゼリー状・ヨーグルト状ドリンクは食べ物の分類になります。禁食時間中は控えてください。
手術が終わればその後の食事制限はありませんので、手術直後からいつもどおりのお食事をしてかまいません。
飲酒
手術の前日の飲酒は控えることをおすすめいたしますが、どうしてもという場合は酔わない程度の量にしてください。
手術後は、アルコールによって炎症や内出血が強く出ることを防ぐために手術当日と翌日の2日間は禁酒となります。
その後は飲んでいただいてもかまいませんが、飲酒により血行が良くなると痛みが強くなる可能性があります。痛みが強い時期はご注意ください。
清潔
手術前日に手術をする部分(そけい部)の剃毛をご自身で行っていただきます。切開法での手術の方はもちろんですが、腹腔鏡での手術の方も同様の処置をお願いしています。また、腹腔鏡での手術の方はおへそから器械を入れますので、おへその中に汚れ(へそのゴマ)が溜まっているとそれらが感染源となるため手術日までに取っておいてください。
手術の前日、または当日に必ず入浴をしてから来院をお願いします。
手術後はすぐにシャワー浴はしていただけます。傷口に防水のフィルムテープを貼っているため、せっけんで体を洗うのも問題ありません。
入浴(湯船に浸かる)は術後3日目から可能です。飲酒と同様で、体の血行が良くなると痛みや内出血が出やすくなるので注意してください。
仕事・運動・運転
手術当日まではとくに制限はありません。
手術当日は静脈麻酔の影響で1日中ぼーっとした感じ(酔っ払った感じや寝不足な感じなどと表現する方もいます)が残りますので、どこかへでかけたり職場に戻ったりするのは禁止となります。ご自宅でゆっくり過ごしてください。
当日の手術後は麻酔の影響が残っています。車両の運転は事故の原因となりますので禁止となります。
翌日以降は麻酔の影響は消失しますので、運転は問題ありません。
仕事に関しては、術後3日間は痛みがピークでありますので仕事内容に応じて数日はお休みすることをおすすめしています。デスクワークなら平均2、3日後から復帰されている方が多いです。在宅勤務等ができる方で早くて翌日から復帰したという方もいらっしゃいますが、「手術後は3日前後痛む」という前提で復帰のスケジュールを組んでいただくことをおすすめいたします。
力仕事の方は診察時に担当医と相談になりますが平均1~2週間お休みしていただくことが多いです。
運動に関しては、まずは術後1週間後の受診日までは控えていただき、再診の状況で判断となります。
旅行など
手術後は痛みのピークは3日間と言われていますが、3日を過ぎたら無痛になるというわけではありません。痛みの感じ方は個人差がありますので、痛みが数日間気になる方もいらっしゃいます。そのため、手術後すぐに旅行の予定や楽しみにしている予定、スポーツの予定(ゴルフなど)はお控えください。
鼠径ヘルニアは完全に戻っているうちは緊急性のない病気ですから、急ぐ必要はありません。手術後1~2週間は遠出の予定がないスケジュールで手術予約をしていただくようお願いしています。
手術の創(きず)について
傷口は糸で縫いますが、その糸は吸収糸と呼ばれ傷の治りとともに溶けてなくなる糸です。そのため抜糸をする必要はありません。
吸収糸で縫った上から、よりきれいに傷がくっつくように医療用の紙テープを貼りそのさらに上に防水フィルムのテープを貼ります。腹腔鏡手術の場合は紙テープのかわりに医療用のボンドで傷を固定します。
手術後にご自身でお腹を見ると、防水フィルムのテープが貼ってある状態です。手術後2日間テープに血が滲んできます。これは、糸がほどけて傷が開いてしまったわけではなく、縫った隙間から滲み出ているだけなのでとくに問題ありません。1週間後の診察までご自身で処置することはなにもありません。
手術の創の経過(鼠径部小切開法)
手術後に起きうる症状
・痛み
手術後は痛みが出ます。とくに3日間がピークでありますがそのあとは徐々に楽になっていきます。痛みの感じ方は人それぞれなので一概には言えませんが、手術の翌日はベッドから起き上がる動作だけでも痛くて動きにくいという方が多いので翌日の仕事はお休みすることをおすすめします。
仕事復帰のタイミングは別ページにも記載していますので参考にしてください。
・腫れ、しこり
手術後はほとんどの方に腫れが出ます。この腫れは傷が治る過程で起こるもので、正常な反応です。腫れの大きさは個人差があります。腫れは数ヶ月かけながら元の状態に戻るので長い目で様子を見てください。半年ほどで左右差がなくなったという方もいます。
また、傷のあたりを触ると固く感じたり、しこりがある感じがします。この症状も一時的なものなので心配はいりません。
・出血、内出血
手術後にご自身でお腹を見ると、防水フィルムのテープが貼ってある状態です。
手術後2日間でテープに血が滲んできます。これは、糸がほどけて傷が開いてしまったわけではなく、縫った隙間から滲み出ているだけなのでとくに問題ありません。
また、傷のまわりにあざ(内出血)が現れます。ぶつけたりした時にできるあざと同じで、2~3週間ほどで内出血は体に吸収されて消えていきますので安心してください。
あざの色は重力に従って下におりてくるので、傷の周りに出ていたあざがだんだん足の方へに下がってくることがあります。男性の場合はあざが陰嚢に出ることも珍しくありませんが、異常ではありませんので様子をみて大丈夫です。
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