鼠径ヘルニア
子供の鼠径ヘルニア、臍ヘルニアなど
子供の鼠径ヘルニア
赤ちゃんや子供の鼠径ヘルニアも多いです。
鼠径ヘルニアの原因は体質であると前項でご説明しましたが、それには解剖的な理由があります。胎児の時、お腹の中には腹膜に包まれた内臓があり、発達の段階で男児なら精巣、女児なら卵巣が鼠径管という道を通ってお腹の中から鼠径部に降りてきます。その時に腹膜に包まれたまま降りてくるため、腹膜は袋状に伸びた状態になります。この腹膜の袋を腹膜鞘状突起(ふくまくしょうじょうとっき)といいます。
腹膜鞘状突起は精巣・卵巣などが固定されれば閉じてお腹の中とは分離されますが、中には腹膜鞘状突起が残ったままの人もいるのです。
この腹膜鞘状突起がヘルニアの袋(ヘルニア嚢(ヘルニアのう))になり、腹圧がかかった時に腹腔内から腸などが袋に入り込んで鼠径部が膨らみます。
赤ちゃんのうちに手術をすることも多いですが、子供の鼠径ヘルニアの場合は成長とともに筋肉が発達し、鼠径管の周りの筋膜~筋肉が締まって穴が塞がり、自然と膨らまなくなることも多いです。
そのため、『子供の頃は鼠径ヘルニアがあったけど、だんだん出なくなった』ということがあります。
しかし、大人になり、生活習慣や肥満、女性なら妊娠出産などで腹圧が強くかかるイベントがあったり、加齢などで鼠径部の筋膜が弱くなったりするとまた膨らんでくることがあるのです。
小児の手術は手術器械や麻酔ともに特別な設備が必要になるため、当院では行っておりません。小児の鼠径ヘルニア手術は総合病院等の小児外科になります。中学3年生以降の体格がしっかりしたお子さんであれば、成人と同じ設備で手術ができますので、その場合は鼠径部小切開法(メッシュを使わない従来法)で当院でも手術を行っています。
その他のヘルニア
鼠径ヘルニアは鼠径部に膨らみが出てきますが、お腹のヘルニアには他にも、おへそが膨らむと臍ヘルニア(さいヘルニア)、過去の傷跡付近が膨らむものを腹壁瘢痕ヘルニア(ふくへきはんこんヘルニア)などがあります。どちらも場所は異なりますが、腹部の筋肉や筋膜に緩い部分ができて穴があき、腸などが脱出して膨らむものです。
臍ヘルニア
臍ヘルニアはいわゆる「出べそ」です。
通常おへそは陥没した形状をしていますが、臍ヘルニアの方は腹圧をかけるとおへそが丸く膨らんできます。腸管が脱出している状態です。
大人の臍ヘルニアは自然に出なくなることはありませんので、治療は手術になります。鼠径ヘルニアと同じく、おへその奥にある筋膜の穴をメッシュで修復します。膨らみの大きさにもよりますが、切開創はおへその下あたりを1.5~2cm程度横に切ります。
臍ヘルニアの手術も当院で行っています。麻酔方法なども鼠径ヘルニアと同じです。手術費用は健康保険3割負担の方で4万円前後、1~2割負担の方は高額療養費適用により18,000円となります。
高度肥満の方や大きな臍ヘルニアの場合は入院治療をお勧めしています。
※ 臍ヘルニアと見分けがつきにくいのが「臍突出症」です。見た目は同じようにおへそが出っ張っているのですが、臍突出症は臍ヘルニアのように膨らんだり引っ込んだりしません。臍突出症は腸管が出ているのではなく、皮下の瘢痕組織が過剰にあるために出っ張っています。
臍突出症の治療は当院では行っておりません。美容形成外科にご相談いただくとよろしいかと思います。
腹壁瘢痕ヘルニア
腹壁瘢痕ヘルニアは、過去に受けた開腹手術や外傷などの傷付近に膨らみが現れます。
鼠径ヘルニアと混同されて当院にお問い合わせいただくこともあるのですが、腹壁瘢痕ヘルニアは過去の手術・外傷による癒着の影響があるため、深い全身麻酔下での手術となります。そのため日帰り手術は難しく、当院では行っておりません。当院からは、連携先病院へご紹介しております。
この記事の監修者
医療法人社団オリビエ会
大宮セントラルクリニック
理事長 高島 格
1960年東京都生まれ。
東京医科歯科大学医学部卒業後、病院の外科で20年勤務し様々な手術を経験。
中でも得意としていた日帰り手術をより多くの人に受けてもらいたいと、2007年東京都新宿区に日帰り手術専門の新宿外科クリニックを開業する。
現在は、新宿外科クリニックと埼玉県さいたま市の大宮セントラルクリニックの2院を運営し、累計手術実績は下肢静脈瘤手術で約11000件以上、鼠径ヘルニアは8600件以上に及ぶ。
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